衆議院議員 松島みどりブログ

話題のトピックについて、詳細に触れています。

2021年5月21日以前の記事です。

保育園の竣工式典で

2013.02.25

荒川区西尾久の「子供の家 愛育保育園」の新園舎竣工記念式典に出席した。
地上5階地下1階の「都市型保育園」。地下といっても自然光を取り入れているから明るいが、法律上、保育室には使えない。大人の研修会場として用いる。屋上には子供用の小さいプールやシャワーも。

木材を豊富に使った階段や扉。階段には子供の目の高さにいろんな形の窓があいている。トイレの色がさまざまでかわいい。成田豊子園長から「子供にとってはトイレが大事だから、年齢ごとに色や模様を変えているんですよ」と聞く。食育に力を入れ、毎日の給食の材料を炭水化物、タンパク質、ビタミンに分けて壁に掲示している。

成田園長と妹の上原副園長の父が昭和25年に開園した伝統の長い保育園。
地元の60代の男性が「ここの卒業生なんだよ。○○ちゃんと同級生」と語っていた。かつて園庭の真ん中にあったドングリの木は、1階正面の壁掛け時計や面談室のテーブルに姿を変えて残っている。

私は、こんな挨拶をした。
「昭和25年といえば戦後わずか5年の日本が貧しい時代。子供を預けて働く親も必死だっただろうし、預かるほうも補助金などない時代に、命がけで施設を運営していたでしょう。

今、荒川区は待機児童ゼロを目指して、がんばって取り組んでいるけれど、自治体や国が保育園の充実に力を注ぐのが当たり前になって、まだ何年もたたない。『女が子供を預けて働くなんて』という風潮が長らく続いてきました。

私は保育園に関して、人生で2つの鮮明な記憶があります。
一度目は1980年に大学を卒業し、朝日新聞の記者として宮崎支局に赴任した時のこと。保育園などあまりなく、粗末なベビーホテルで火災が起き、小さな子が命を失いました。その隣には農林省の事業で建設された立派な農業改良普及所が建っていて、その落差にショックを受けました。

県の保育課長に取材したら『子供を預けて夜働くなんて、ひどい母親だと思いませんか』と言ったので、私は『夜の職場しか働き口がない女性だっているんですよ』と噛みつきました。

それから10年以上たち、30代半ばで結婚した時のことです。
23区のあちこちの区役所に電話をかけ、『ゼロ歳児保育はどれくらいの枠ですか。それと、何月までに産んだら預けやすいけれど、年度が始まってすぐに生まれた子は保育園に入りにくいとか、誕生月によって差があると聞くんですが、おたくの区はどうですか』と聞きまくりました。

保育課の窓口とのやり取りは、『今、生後何か月ですか?』『まだ、生まれていません』。『出産予定はいつですか』『いえ、まだ妊娠していません』。『生まれてから質問してください。せめて出産予定日が決まってから』

『お腹が大きくなったら、マンション探したり、引っ越したりするのが大変だから、その前に、どこの区が保育園に入りやすいか調べようとしているんです。』と私。チグハグなまま、双方が怒り出す始末でした。

今だったら、インターネットで、各区の保育事情を比べることも可能だろうけれど、20年前は、情報入手が大変でした」と。

保育所の事前調べに失敗したからというわけでもないが、私は子供を持つことなく、現在に至っている。

「子供を持ちたい。育てたい」そして「働き続けたい」「働かなければ生活が成り立たない」という女性の後輩たちの望みをかなえたい。そして、未来の日本を担う子供たちがちゃんと育つ場を確保したい。

今、保育士の不足が問題となっている。給与が低いことが不人気の理由のひとつなので、給与引き上げに政府も取り組む考えだ。(介護福祉士とまったく同じ問題を抱えている。)

祝賀会に参加していた区内の公立、私立の保育園の(公設民営とか指定管理制度とかが増えているので、公立私立の区分はあまり意味がなくなっているのかもしれない)園長先生たちとお話をした。

一様に「人手の確保」に頭を悩ませている様子だ。
「給料が低いこと以上に、労働時間が長いのが、人が集まらない理由」と指摘する。
朝7時15分から夜7時15分まで預かる。出勤時刻を1時間ずつずらしたり、子供を持つ保育士も多いから、朝と夜の数時間はパート勤務で補ったり。

「お母さんたちは、預ける時と引き取る時が違う保育士というのは心配だろうけれど、仕方がない」「パートを入れなかったら、人繰りがつかない」「1時間以上かけて通勤している保育士もいるから、何かの事情で電車が止まったら、来れなくなる」

確かに保育園を増やすのは単に建物を建てるだけではすまない面が多い。
大いに勉強になった。

この夜、ある会合で60歳近い女性が「娘も娘婿も保育士。専門学校で同級生だった。娘は自分が子供を保育園に預けて保育士を続けていることに疑問も感じているようだ。婿は川崎の保育園に勤務し、通勤に1時間以上かかる」と話していた。偶然とはいえ、昼間、園長先生から聞いたことを地で行く話だった。