話題のトピックについて、詳細に触れています。
2021年5月21日以前の記事です。
2016.05.11
「製造業における海外子会社等従業員の国内受け入れ制度」(経産省)がスタートする。これまで法務省は企業内転勤として認める在留資格を「大卒程度の仕事」とか「工場長など管理職」に限定していたが、海外工場の製造職が日本の工場に転勤(日本での活動は最長1年)できるようになった。
ねらいは日本のマザー工場(生産拠点)を守ることと、海外への工場進出を促すこと。中堅、中小企業では海外工場に指導者を長期派遣するのが困難。現地従業員を日本に転勤させて、新製品の製造や新技術導入に関わる職種、作業に従事してもらい、帰国後、それらを生かして、その会社の工場で働くことになる。
「滞在は最長1年」のほか、企業には以下の制約条件を課す。
「日本人と同等の報酬」「労働関係法令及び社会保険関係法令を遵守」(最低賃金を守り、日本の社会保険に加入)「受け入れ企業が帰国担保措置と滞在中の従業員の住居を確保」「家族帯同は不可」「企業と外国従業員との間でコミュニケーションが取れる」「帰国後1年間は解雇禁止」(通訳など)体制。
入国管理法の在留資格のひとつである「特定活動」に関する改正告示を3月15日付で施行。中堅、中小企業から経産省に問い合わせが来ており、今後、経産相が企業を認めれば、実際に転勤してくる従業員個人についての入国審査(過去に日本で法令違反をしたりしていないか、など)は法務省が行う。
日本は外国人の単純労働者を受け入れていないし、私も当面、その方針を維持すべきだと考える。
だが、特定のある工場で求められる製品をきちんと作れる、そして品質や効率の改善に寄与している技能職は決して「単純労働者」ではないと、私は数多くの工場見学経験から、そう考える。製造業というのは、そういう人材で成り立っているのであって、ホワイトカラーだけ転勤させて、製造業の国際展開など出来ない。
また、上記のような制約条件は、「外国人を安上がりに使う」(その結果、日本人の労働市場が奪われる)「来た会社をやめて、国内のよその仕事に流れる」(不法滞在のおそれ)「家族を呼び寄せる」(やみ移民のおそれ)などの事態を防ぐために妥当だろう。
私は、中国などに進出したメーカーの経営者たちから「中国の工場で働く現地従業員を日本国内の工場に転勤させたいが、法務省が認めない」と繰り返し苦情を言われてきた。
経産省の認定制度に基づく「国際転勤制度」がうまく機能することを願う。