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2021年5月21日以前の記事です。
2016.11.21
墨田区で長く暮らした、江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎(1760−1849)の作品を集め た「すみだ北斎美術館」(設計は妹島和世<せじまかずよ>さん)が22日開館する。 21日のレセプションに出席し、「葛飾北斎は海外での評価が高い。北斎コレクション を持つ外国の美術館と提携して交流展を開くなど、どんどん発展してほしい」と挨拶 した。カハノフ・イスラエル大使(女性)が幼少期から地元の日本美術館で北斎の絵に親しみ、作文にも書いた思い出を語り、宮田文化庁長官、田村観光庁長官からも励ましの祝辞をもらった。
北斎は墨田区に生まれ、89歳に及ぶ人生で90回以上も引っ越ししたといわれるが、そ のほとんどを墨田区で過ごした。1999年に米誌「ライフ」が編んだ「この1000年で最 も偉大な業績を残した世界の100人」に日本人として唯一登場した。1867年のパリ万 博から世界に知られ、印象派の画家たちに影響を与えた。
開館記念展では、海外に流出し行方不明となっていた、長さ約7mの「隅田川両岸景 色図巻」が初公開される。(墨田区が昨年取得)墨田側は両国橋、回向院から木母寺 まで、台東区側には待乳山聖天、吉原大門などが登場する。
また、関東大震災で消失した「須佐之男厄神退治之図(すさのおみことやくじんたい じのず)」のカラー復元も、見ものだ。北斎が86歳の時に描き、地元の牛島神社(向 島 1丁目)に奉納した巨大な絵馬。凸版印刷とNHKが共同で、白黒写真を元に一年がかりで復元した。23日夜、NHKが特集番組を放送する。牛島神社には白黒の復元絵馬が掲げられている。
同館建設は、私にとっても非常に思い入れがある。北斎は本所割下水で生まれたとさ れるが、その近くの都市公園の一角に美術館を建てるため、国交省と都庁に了解を得 ることに苦労した。今では都市公園に保育園を作ることも国家戦略特区として認めら れているくらいだから、規制緩和の先駆けとして意味があっただろう。 また、東京スカイツリー建設に伴う周辺整備のために獲得した国交省のまちづくり交 付金のメニューの一つだったが、他の北十間川整備や区内循環バスが順調に進む一方 で、北斎美術館は東日本大震災や建築費高騰の影響で建設が当初予定より大幅に遅 れ、ハラハラさせられた。その間に区内外から五億円を超す寄付が集まるという嬉し い出来事もあった。
地元の一部には「箱もの批判」もあったが、「世界の北斎」なんだから、学芸員がう まく特別展を組んだりすれば、国内外から、いくらでも集客できるというのが私の持 論だった。挨拶の中でも「外務大臣政務官時代、欧米の大使らに、私の地元は北斎が 生きた町だと話すと目を輝かし話が弾んだ。パリでは2014年にグラン・パレで開かれ た北斎展に約36万人が来場。妹島さんはルーブル美術館のランス別館の設計もしてお り、前フランス大使は、妹島さんと北斎の組み合わせに大喜びしていた。ポーランド の京都といえるクラクフには通称「マンガ館」という日本美術館があるが、これは北 斎漫画のコレクションによるもの。天皇皇后両陛下も視察された」と述べた。