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2021年5月21日以前の記事です。
2016.09.14
アジア最後の経済フロンティアと言われ、日本企業の進出ラッシュが続く親日国ミャンマーを9月上旬訪問し、交通インフラや経済開発特区(工業団地)など日本の支援の実情を視察したり、日本企業の駐在員の方々から苦労話を聞いたりした(本稿末に地図)。今春、アウンサン・スーチー氏を国家最高顧問(実質的な首脳)とする本格的な民主政権がスタートしたが、「日本の明治維新と戦後復興とIT革命が同時進行中」という見方もあるほどで、「ここ2年で大きく変わった」と大使館員や駐在員らが声をそろえるほど、変化が激しい国だ。
最大都市ヤンゴンは、日本の中古車(日本語で会社名を書いたままの乗用車やバス会社名、幼稚園名を書いたバスがたくさん走行)を中心に車が非常に多く、大渋滞。危険だという理由でバイクの市内乗り入れは禁止。ガタガタの歩道には、巻きスカートのような民族衣装ロンジーをまとい、素足にゴムサンダルの男女があふれている。道端の屋台は飲食店のほか、青果物や衣料品は勿論、肉類や魚を冷蔵設備なしで売っている。横断歩道はほとんどなく、真ん中で立ち往生している人をかなり見かける。
年間の交通事故死者数が約4000人で日本(昨年は4117人)とほぼ同数。人口が日本の半分弱で、車がわずか72万台しかない(日本は8100万台)であることを考えると、あまりにも多い。右側通行にもかかわらず右ハンドルの中古車が多いこと、街灯が少ないため、夜間はライトをギラギラ点けて走るので道路の真ん中を走る自転車(!)が非常に見にくいこと、民営の路線バスが乗客争奪戦のため猛烈な割り込みでバス停に接近すること(開けっ放しのドアの中段に男性車掌が立ち、行き先を叫びながら勧誘している。掲げている手の指の間にはお釣り用のお札が挟んである)などが要因のようだ。敬虔な仏教徒が多いミャンマーは強盗や泥棒が非常に少ない治安のよい国だが、穏やかといわれる民族もハンドルを握ると変貌するのだろうか。
そこで、日本から都市交通政策の専門家を派遣し、ヤンゴン市内に地下鉄かモノレールをどう建設すればよいか調査中だ。また、円借款による鉄道整備として、ヤンゴン環状線(山手線よりひとまわり長い46キロだが、一周3時間かかるし、運行回数も少ない)及び、ヤンゴンと第二の都市マンダレーを結ぶ鉄道の信号システム改修や新車両調達が始まっている。
ヤンゴン中央駅から2駅先まで乗車してみた列車はJR東日本の中古車両でキハ40系、48系、快速、回送などの文字が。車内には扇風機が付いていて、切符切りの車掌が回って来る。野菜や果物、川魚などの大きな籠を持ち込んでいる行商の女性たちも。
ヤンゴン川(イラワジ川の支流)河口の両岸約6キロを結ぶフェリー3隻(定員1200人、自転車は乗せられるが車は不可)は2014年、日本が無償供与した。輸送費を含め1隻3億円。チェリー1号2号3号と名付けられ、日本人だと無料にしてくれる。
朝5時半から夜9時半まで15分おきに運航、中心市街地に通勤通学する乗客で朝夕は大混雑という。私が乗った昼間は乗船率9割といったふうで、甲板に立つと泥のような川の上を流れる風が気持ちよかった。