衆議院議員 松島みどりブログ

話題のトピックについて、詳細に触れています。

2021年5月21日以前の記事です。

性犯罪に関する刑法のさらなる改正を目指す

2020.02.27

性犯罪厳罰化の刑法改正は私が法相の時の指示で成立したが、現在、自民党内で被害者団体とともに、再改正の動きを進めている。①暴行脅迫要件の緩和②性交同意年齢(現在は13歳未満)の16歳未満への引き上げ③監護者性交等罪の「監護者」の範囲拡大など。28日、女性議連で森法相に申し入れる。

平成29年刑法改正附則で、「3年後検討事項」が定められ、今年6月がその時期にあたる。しかし、法務省の動きが遅い。女性の仲間である森まさこ法相の任期中にぜひ、法制審議会をスタートするよう、法務委員長として法務省に働きかけたい。

昨年4月、監護者性交等罪や酒を飲ませての準強制わいせつ罪などで、判決文の途中まで罪があるように書きながら、無罪の判決を出した例が4件相次ぎ、被害者たちが毎月12日に静かなフラワーデモを各地で繰り広げるようになった。
もともと、性犯罪については被害に遭ったことを隠す人が多く、人前で話すことなど、まれだった被害女性たちが、デモでは自分の体験を語り始め、涙が止まらなくなり、時間をかけて語り続けるということが相次いだ。3月までには47都道府県すべてでデモを実施する。これまでに、のべ1700人余りが参加した。

性暴力が犯罪として認められるには、「暴行脅迫」要件があり、これには「抗拒不能」という、世の中ではほとんど誰も知らない言葉が出てくる。言わば、命がけで抵抗、拒絶したにもかかわらず、犯行が行われたというような意味だ。
人間は、例えば、真っ暗闇で襲われたり、自分よりずっと大きな人に「うるせえ殺すぞ」とナイフを突きつけられたり、口をふさがれたりした場合など、「殺されるかもしれない」という恐怖が先に立ち、声が出ず、体も動かない場合がある。「フリーズ」してしまうのだ。
明治時代の「女は、夫や、未婚の場合は戸主である父親のメンツのために命をかけて貞操を守れ」といった思想が元になっている。
こうした「暴行または脅迫」の要件がある限り、「相手が同意した」という加害者の言い分が通るのだ。
現在の刑法では、相手が13歳未満の性交やわいせつ行為は無条件に犯罪となる。しかし、13歳から15歳、つまり中学生の場合は、成人と同様で、暴行脅迫が必要条件となる。この性交同意年齢の線引きを16歳未満に引き上げるべきだと考える。

これに反対する人は、「14歳同士の恋人がそうした行為を行った時に、犯罪にするのはおかしい。『小さな恋のメロディ』が成り立たなくなる」とか、「女子中学生が自ら男性を誘惑したり、売春行為を行う場合もある」といった言い分を持ち出す。
しかし、前者については、原則を法律で中学生まで守るとし、双方が罪の軽減を願うならば裁判官が判決に反映させればよい。
また、後者については、中学生はたとえ本人に問題があっても社会が守るべき存在であり、この発想は消費者問題や、一般的な犯罪の加害者の場合でさえも、少年法で成人と異なる扱いをすることにも見られる。

監護者性交等罪は、同居していて、経済的にも支配している親や継父、母親の交際相手などが、その地位を利用して未成年に対して性暴力を行ったとき、抵抗の有無に関わらず犯罪とするもので、先の刑法改正で新設された。
ところが、現在の法律では祖父や兄などは「同居、養っている」という条件を満たさなければ「監護者」とならない。
実際には家族における上下関係から、特に被害者が年少の場合、抵抗できず、密室で、何度も犯罪が繰り返される。
また、学校や塾の先生が「特別に指導してあげる」などと言って呼び出す場合や、スポーツの強豪校に推薦入学し、監督やコーチが、「言うことを聞かなければレギュラーになれない」などとプレッシャーをかけた場合にも広げるべきだ。

これらの場合、相手が信頼している人であればこそ、被害者が「まさか・・・」と信じられないままにコトが行われたり、悪いのは自分の方だと思い込んでしまうこともある。
また、「周りに知られると家族の関係がまずくなる」「将来が閉ざされてしまう」という恐怖から誰にも話せず、同じ犯罪が何年も続くこともある。幼少期にこうした性犯罪の被害を受けると、そのあとの精神状態がおかしくなり、非行に走ったり、人間不信に陥ることもある。また、自分の精神状態がおかしい理由に気づくのに何年も、十年以上もかかることさえあるという。
私は法務大臣になった際の記者会見で、「強姦罪が強盗罪より軽いのはおかしい」と指摘して、刑法改正を刑事局長に指示した。
法改正により、量刑の逆転は是正され、また親告罪でもなくなり、監護者等性交等罪も新設した改正刑法が全会一致で平成29年6月に成立した。
しかし、上記のような問題点が残された。
私は、どんな裁判官でも合理的で納得できる判決を出すよう、これらの問題点をきちんと盛り込んだ再改正を急ぐべきだと考える。