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2021年5月21日以前の記事です。
2016.09.03
観測史上初めて台風が上陸し、高齢者を中心に被害を出した岩手県の県北沿岸部に自民党副幹事長として9月3日視察に行った。「東日本大震災から立ち直って五年半。やっと、という所にこの被害」という現地の方たちの苦痛がしみた。各省庁に早急な支援を要請するのが私たちの仕事だ。
9人の犠牲者を出した、岩泉町の認知症の方たちのグループホーム「楽ん楽ん(らんらん)」を訪れ、黙祷。平屋建てで夜中に逃げられなかったという。同じ敷地の老人ホームまで10メートルほどなのだが、山に囲まれた地形で上流があふれ、すさまじい勢いで水が押し寄せたのだろう。
このほか、近くの民家が潰れて2人が下流で遺体となって発見された。
周りには、東日本大震災の時に映像で見たように、車が垂直に地面に突っ込んでいたり、土砂に埋もれた車の後部が跳ね上げられて土が埋まっていたり、なぎ倒されて流れてきた木も大量にある。乾いた後の土ぼこりに咳き込みそうになった。道路が小川のようになっていて、党岩手県連が用意してくれた長靴に履き替えていたので歩けた。
同町は観光地龍泉洞も抱えるが、山を越えて沢沿いにできた6町村が合併して60年。人口は1万人に満たない。
道路が200メートルに渡ってつぶれ、様子を見に行けない先に600人近くがいるそうだ。(3日午後の時点)第9師団(秋田)普通科と書いた自衛隊の車が何台もいた。捜索要員だ。
伊達勝美町長によると、400人ほどが、山を越えた集落に点在し、自衛隊のヘリコプター3機が高齢者らを町の中心にピストン輸送している。第3セクターで運営しているホテルや体育館に避難してもらう。町長は「震災の仮設住宅を撤去したばかりなのが痛い」「震災から5年半。復興事業もやっと終わってお祝いをしようかというところだったのに」と悔しがる。「わずか5、6軒という集落もあるし、高齢者が多い。道路や堤防などまた工事をして、そこに戻って住むのか、町なかに移転してもらうということも考えなければいけない」と。
都会暮らしの私が軽々に言えることではないが、過疎地の高齢化が進んだ限界集落は自然災害の被害を減らす観点からも、移転、集住が必要なのではないかと思う。
もうひとつの視察先は、野田村の安家川(あっかがわ)さけ・ます孵化場。
川の横にあった孵化・稚魚養成池(コンクリートで水深1メートル程度。上には鳥除けのネットが張ってある)が泥に埋まり、使えなくなったのだ。白サケの成魚が安家川を遡上してきたのを捕らえ、腹を裂いて卵を取り出し、5センチくらいになるまで育て(9月から11月)、3月に別の地点から放流する。(鮭の漁業者に売る)すでに4000匹の稚魚がいたが流されてしまった。(この孵化場は毎年4万4000匹程度で岩手県内の20パーセント)鮭は四年後に放流された川に戻って来て漁師が捕る。
「シーズンの初めにやられた。すぐに設備を直さなくてはいけない。その分もさかのぼって、補助金の対象にしてほしい。今年ダメなら四年後に鮭が戻ってこない。漁ができず、市場など流通業者も含め、悪の循環となってしまう。震災の打撃から、やっと立ち直ってきたというのに」と関係者は訴えた。
個人的な話だが、アラスカ産のキングサーモンのバター焼きなど嫌いで白サケの塩焼きが好きな私としても、日本生まれで日本に戻ってくるサケをこれからも維持してほしい。